夢を紡ぐwebマガジン【凛】- 夢を紡ぐwebマガジン -

このビジネスに限ったことではありませんが、相手がきちんと儲けること、  相手にきちんと価値を与えられる提案ができているか。それをするためには、まずお客様に興味を持つことが大切です。

ビッグカンパニーではなく「グッドカンパニー」を創りたい。

そう語るのはHRデザイン代表取締役・松本直樹氏。

リクルート出身の松本氏の元、求人広告業界で右肩上がりの成長を続ける同社だが、

すべてが順調だった訳ではない。

経済活動が低迷する時代の中、会社存続の危機を乗り越えた彼の決断とは。

そしてその根底にある、経営者としての信念とは。

詳しい話を伺いました。

 

 

――HRデザインの事業内容を教えてください。

 

 

一言で言うと、リクルートの求人広告の代理店ですね。

 

人材採用には新卒、中途、アルバイト・パートというカテゴリーがありますが、

アルバイト・パートと中途採用がうちの主な業務になります。

 

メディアで言うとタウンワーク、フロムエーナビ、リクナビネクストや、とらばーゆあたりですね。

 

もともと僕がリクルート在籍時代に大手を中心に担当していましたので、

今も大手のクライアントさんからの発注が多いですね。

全国展開している飲食店やコールセンター、人材派遣系の会社が多いです。

 

 

――求人広告業界に入ったきっかけはなんですか?

 

 

リクルートには新卒で入社したんですが、特にこの仕事がやりたいっていう訳ではなかったんです。

比較的給料が高かったのとなんとなく面白そうだなと思って面接にいってみたら、

とても魅力的な会社だったのでここで働いてみようかなと。

 

 

――リクルートでの経歴を教えて下さい。

 

 

最初は中途採用の部門に入って、リクルートフロムエーに出向。

営業もシステム部門も経験しました。そして、タウンワーク立ち上げのために関東に異動しました。

 

それまでのリクルートは、フロムエー、とらばーゆ、ビーイングなどの書店やコンビニで購入するものでしたが、今度はフリーペーパーを出そうと。

 

関東での成功をきっかけに、関西でのタウンワークの立ち上げにも携わり、

その後事業統括の仕事を経験しました。

 

当時はリクルートにはいろんなメディアがあったんです。

関連会社や代理店も多数あり、メディアとチャネルが混在している状態だったので、

そこを整理しましょうっていうのが事業統括の仕事です。

 

元々、今の我々のような代理店も大阪市内に集中していたんですよ。

それをタウンワークと言う媒体を入れたことで、エリアの専属代理店という形で少し外側に出す。

 

代理店に仕事を出していくので、リクルート直販部隊の営業マンをカットしていったんです。

まあ、ある意味リストラですよね。

 

それを誰かに乱暴にやられるくらいだったら、自分でやろうと思って。

代理店に出向させたりして、一人も解雇者は出しませんでした。

 

あとは関連会社が各地で拠点をそれぞれ出している。

これを統合して家賃等の固定費を下げたり調整したりするのも事業統括の仕事でした。

 

 

――なぜ起業したんですか?

 

 

長い間やってきたこともあって、一旦リクルートという会社から離れたくなったんですよ。

新卒で19年もやってきましたが、リクルートという会社しか知らないので。

 

で、退職を前提に営業に戻してもらって、2年後に辞めました。

 

辞める少し前に、その当時お世話になっていた方から「今の関西の課題は何だ」と聞かれて

「中心部が弱くなっています」と答えたら、「ならそこを自分でやればいいじゃないか」と言われまして。

 

確かに課題を置きっぱなしで辞めるのも嫌だったので、

市内の強化代理店として会社をスタートさせました。

 

それが15年前ですね。

 

 

 

 

お金がない!!

 

 

ただ恥ずかしい話、辞める時にまったくお金がなかったんですよ(笑)

飲みに行くのも経費ではなく自腹で出していたので、貯金もわずかしかなかったんです。

 

「独立するにもお金がない」という話をしたら、先程の独立を勧めてくれた方が

「社内貸付制度を作ればいいじゃないか、作れる立場でしょ?」って(笑)

 

あと、ありがたかったのは、先にリクルートグループを出た諸先輩方が僕が独立するという話を聞いて

「お金ないだろ?100万200万円くらいなら出せるから、みんなに声かけてやる」って言ってくれて

結果的に2000万円くらい集まったんですよ。

 

ほんとにありがたかったですね。でも、それは借りれませんと伝えました。

最終的には制度を作って、リクルートからお金を借りて、退職金で返して、

ある意味退職金を資本金にしたような形ですね。割と自由な時代でした(笑)

 

 

――この仕事のどういったところに楽しさを感じますか?

 

 

自分のキャリアによって変わるとは思いますが、

例えば新入社員だったら新しい仕事を覚えることに楽しさを感じますよね。

良くも悪くもリクルートと言う会社は次から次に課題を与えてくれました。

 

僕はもともと営業がやりたくて入社したんですが、最初に配属されたのは経理だったんです。

次にシステム系をやって、ずっとこのままかなと思っていたら営業に移って。

 

やっと営業でカンを掴んできたなと思ったら拠点異動したり、

プレーヤーとしてある程度実力がついてきたらマネージャー、

関西でやれるようになったら関東に異動したり、

2、3年に1度くらいのペースで新しいことに挑戦できた面白みはありました。

 

あとはお客様ときちんと向き合った時に、ありがとうと言ってもらえる。

我々が関わったことでその会社が大きくなったり、

アルバイトから採用した人が数年後に店長になってまた声を掛けてくれたり。

 

25歳で営業職になったんですが、その頃飛び込みで回っていた時にお取引して頂いた方が

27年たった今でもうちのお客様なんです。

そういう長い付き合いができるのはこの仕事のいい所だと思いますね。

 

たまに同行でいくと「歳取ったねー、白髪増えたねー」なんて言われます(笑)

 

 

――独立してから苦しかった時期はありますか?

 

 

なんだか思った以上に順調だなと思っていたんですよ。

もっと早く独立すればよかったと思えるくらいに。

 

今15期目に入っているんですけど、1期目2期目の頃は毎月給料を払えるのがすごくうれしくてありがたかった。当たり前なんですけどね(笑)

 

ただ長くは続かなかった。

 

派遣法の改正があったんですよね。当時は従業員26名位で2拠点構えていました。

週の取扱高が多い時で2000万くらいだったんですけど、

派遣会社や請負の会社の案件が多かったこともあり出稿が激減して、売上が半分くらいになりました。

 

拠点を閉めて本社のオフィスも半分の面積にして、固定費を減らして人件費を減らさずにやっていこうとしました。

 

大変だけどなんとかやっていこうとしたその翌年にリーマンショックが来て、売上はさらに半分にまで落ちてしまいました。

 

この状況が何年か続いたらとても会社がもたないと思いましたね。

他の代理店は社員を解雇したり、出勤調整をかけていたんです。

うちも自然退職する社員を止めることはなかったです。

 

 

 

 

選択肢

 

苦しいけれどもこのままのメンバーでやっていくか、

今の売り上げでやっていけるように人員を削減するか。

どちらかを決めなければいけませんでした。

 

そんな状況の中でも、社員全員がこの組織でやり続けることを選択してくれたんですよ。

すごくうれしかった。けれどその半面しんどい部分もある。

でもそういうメンバーが集まってくれているなら、行ける所までみんなを信じて頑張ってみようと決めました。

 

それでキャリア的には少し早かったんですけど、従業員にマネージャー研修を受けさせました。

今、一時的に賞与を払ってもきっと残らない。

でもこの組織でやると僕も腹をくくったし、もし仮に会社がダメになっても、

管理職の研修は絶対に従業員の役に立つ。なのでお金があるうちに研修をしました。

 

そうするとみんなが当事者意識をもって仕事に取り組むようになっていきました。

土曜日の休みも隔週にして少しでも仕事をとり、マネージャーにはさらに1日多く働いてもらって。

そうやって地道に少しずつ回復させていきましたね。

 

乗り越えられた今だから言えることですが、苦しかったけど良い経験だったのではと思っています。

 

 

――社員教育はどのように行ってきましたか?

 

 

社員教育ってあまりやってこなかったですね。最初にどういった会社にしようかを考えたんですが、

大きな会社を作るのも自分の肌に合っていなかったので、ビッグカンパニーではなく、グッドカンパニーを創りたかった。

 

それはお客さんや働いているメンバー、その親御さんから「HRデザインっていいね」と言われるような会社。規模とか洗練度合いよりもそういった評価を目指しています。

 

採用面接のときには、具体的な「グッド」を一緒に考えてくれるんだったら一緒に仕事をしようと話しています。

 

せっかく規模の小さい会社で働いているんだから当事者意識、自分自身の影響力で会社を創っていってほしいですね。

 

もうひとつ、「感動」と「成長」というキーワードがあります。

その仕事、考え方は周りに感動を与えられるか。あなた、そしてメンバーの成長に結びつくか。

迷ったときにはそれを判断基準にしてほしいと伝えています。

 

トップダウンはほとんどないですね。

強制力を働かせると、あるレベルまでは到達できると思いますが、

やらされている仕事って面白くないし、辛いし、しんどいでしょ。

 

ある程度仕事が身に付くまではそれでもいいかもしれないけど、

そこから先にある本人の「仕事が楽しい」「こんなことをやってみたい」と言うモチベーションと比べたら雲泥の差があると思います。

 

 

――松本社長の仕事に対する信念を教えて下さい。

 

 

このビジネスに限ったことではありませんが、相手がきちんと儲けること、

相手にきちんと価値を与えられる提案ができているかが大事だと思っています。

 

特に今のビジネスは、必ずしもお客様にリターンがあるわけではないんです。

 

でも少しでも採用の確率を上げたり、将来にわたってその会社がきちんと採用ができるようになったり、こういう人を取れば会社が伸びるという視点を持って今まで提案してきました。

 

それをするためには、まずお客様に興味を持つことが大切です。

 

 

――これから起業したい人にアドバイスをおねがいします。

 

 

ぼくが起業した時はお金がなかったですが、お金があれば大丈夫なわけでもないですよね。

あってもびっくりするくらいすぐ減っていきますし。

 

それよりも周りからの信用や信頼、実際にその仕事の経験値、お金を動かせる力を身に付けておいた方がいいですね。ありきたりですが、経験や人脈はとても大事だと思います。

 

僕は営業の前に経理やシステム、事業統括とさまざまな経験ができましたので、すごくありがたかったです。起業してしばらくは自分もプレーヤーとして業務の基準となるものを作らなくてはいけないので、苦手な分野を無くしておいた方がいいんじゃないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

編集後記

 

 

抗うことの出来ない世の中のうねり。

HRデザインもリーマンショックという未曾有の金融危機に飲み込まれた企業のひとつだ。

数多くの企業が消えていく中、彼らが生き残ったのは運がよかったからなのか。

 

いや、違う。

松本社長が目指したグッドカンパニーというビジョン。

顧客へ価値を与える信念。

それに呼応するように、感動と成長を体現しながら会社を創る社員たち。

 

社員一丸となり出来ることを全力で取り組んだからこそ、危機を乗り越えられたのだ。

 

松本社長と社員一人一人の想いがある限り、HRデザインはいつまでもグッドカンパニーであり続けるだろう。

 

 

取材・文 / 森田 総明

写真   / 細川 俊介


松本 直樹

株式会社HRデザイン
代表取締役

●求人広告代理業
・求人誌、求人サイトによる求人情報サービス
・『TOWN WORK』『TOWN WORK 社員』『アントレ』『yumex』『FromA navi』『はたらいく』『リクナビ』『リクナビNEXT』『リクナビ派遣』『とらばーゆ』『アントレnet』等の広告代理業務
●採用代行
●求人採用計画の企画立案及びコンサルティング
●人材育成及び職業能力開発のための教育、研修及びコンサルティング
●出版業、印刷業及び広告宣伝業
●SOUND SPLASH 事業( レーベル運営)
●上記に付帯関連する一切の業務

~人材採用に付加価値を~

「売上を上げる」営業として素直な喜びを感じていた(株)リクルート在籍時代。
その意識が変化し、独立を考えるようになったのは神戸エリアを担当していた時でした。

阪神大震災の経験。
ビルが崩れ、お店はなくなり、電話も繋がらない。
被災地へ足を運び、取引のあったお客様に会いに行きました。
昨日までアパレル販売をしていた会社が、うどん屋をはじめるという。
「今必要なんは服やない、食べ物や」
被災者であるにも関わらず、自ら行動を起こすバイタリティに驚嘆したことを覚えています。
その方のうどん店をオープンさせるために自分ができること。
それは営業ツールで商品の紹介をすることではなく、
水とウェットティッシュ、マスクを持っていくことでした。

「その地域のために自分に何ができるんだろう?」

人材採用をする前に、そのお店、その企業が機能するようにしなければならない。
そのサポートも自分達の仕事だと実感したできごとでした。
それ以来「もっと自分達らしいサポートがしたい」という想いが日に日に強くなり、
2004 年、19年間在籍していた(株)リクルートから独立。
その後、リクルート媒体を通じた採用計画の提案の他、
飲食店の経営サポートや営業組織立ち上げのお手伝いをしたり、様々なことに取り組んできました。

人的側面以外の課題にも対応できるよう、たくさんのアライアンスを組み、
過去の自分では解決できなかった課題にも力を発揮できる形へと成長しています。

これからも成長を続け、より充実した付加価値を提供していきます。

この人を応援したい!
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