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実は、前しか見ない人は幸せになりにくいんですよ。  たまに後ろを振り返って「頑張ってきたなー」「偉かったなー」って自分に対して思える人の方が幸せになれるんです。

「歌は生き様、音楽はウソをつきません」

そう語るのはジャズシンガーとして数々のステージで活躍している藤村麻紀さん。

シンガーとしてだけではなく、Music Neuro Coaching Academy代表として、プロシンガーやトレーナーのコーチングも行っている。

彼女はなぜ歌い、なぜ人を育てるのか。

辛い過去を乗り越えて実現を目指す「歌を通して創造する未来」とは。詳しい話を伺いました。

 

 

技術の先にあるもの

 

――現在の事業内容を教えてください。

 

メインはジャズシンガーですが、同時にMusic Neuro Coaching Academyというスクールの代表もしております。

 

――スクールというのは歌のスクールですか?

 

いえ、実は歌を教えているというわけではないんです。プロのシンガー、そしてそのトレーナーのためのコーチングスクールです。

 

プロならば歌が上手いとか技術が高いのは当り前のことですよね。でも本当に大切なのは「その先」にあるものです。

 

聴いた人が「明日も頑張ろう」と思えたり、心が軽くなったり、理由がわからないけど涙が出たり。

そういう歌が歌えるのが本当に良いシンガーなんです。

 

歌は生き様、音楽はウソをつきません。

 

その人がどういう人か、どういう経験をしてきたか、どんなことに痛みを感じてきたのかが声に表れてしまうんです。

 

だからシンガー自身が、心の底から自分を愛していないとダメなんです。シンガーの子達は、自分の心に葛藤を抱えている子がとても多いんです。

 

そういう子達が少しでも楽になれて、その歌を聴いたみんなが幸せになって欲しいんです。誰かの幸せの背中を押すのがミュージシャン、芸術家の仕事だと思っています。

 

自分を愛して他人を愛せる、本当に愛に溢れた状態で、自分や世界を受け入れることが出来るような人であってほしい。そういう人が歌う歌が広がっていってほしいと思っています。

 

このコーチングのスキルを学ぶのは、もうすでにプロ、もしくはトレーナーとして活躍している方々ですね。

 

ここで学んだコーチングスキルを使って、それぞれの場所で、多くの人たちに愛を広めていって欲しいと思っています。世界が愛に満ちた音楽であふれていくように。

 

 

 

 

――音楽の世界に進んだ経緯を教えてください。

 

昔から歌が好きで、大学在学中に東京都のボーカルコンテストで最優秀歌唱賞を受賞したんです。そして卒業と同時にデビューするという話になったんですが、周りはみんないい会社に就職する。

 

もし自分が売れなかったらどうしようとか、まだ起きてもいないことばかりを心配してしまって(笑)

その世界に入るのがとても怖くなったんです。

 

結局「親に恩返しをしなければいけない」とか、「一度は社会に出てみたいと思っている」みたいな言い訳を用意して、小さい旅行会社に就職しました。

 

大阪へはその会社の転勤がきっかけで来ました。そこでは歌を歌うこともなく、一生懸命仕事をしていました。

 

ジャズとの出会い

 

その会社に出入りしていた方に紹介されて、近くの音楽教室に通い始めたんです。2年くらい通った頃に、会社が倒産してしまったんですが、教室の師匠から「ここで講師にならないか」と誘って頂きました。

 

最初は生徒5人程度の受け持ちだったんですが、最終的には個人レッスンで数十人を教えるようになりました。

 

ライブに出演することも多くなり、一緒に演奏した方がまた別のライブに呼んで下さったりして、シンガーとしての活動も増えていきました。ヤマハの講師、専門学校の講師を経て、大阪芸術大学で准教授として勤めていました。

 

――ジャズには昔から興味があったんでしょうか?

 

もともとジャズなんかぜんぜん知らなかったんですよ、ハードロック少女だったんで(笑)たまたま最初に行った教室の師匠がジャズベーシストだったんです。

 

彼に理論や音楽的な基礎知識を教わっていたんですが、ジャズを聴いてみろと言われてCDを渡されたんですけど、1曲も聴けませんでした。たしかに歌は上手なんですけど、当時は何がいいのかさっぱりわからなくて(笑)

 

でも、ジャズの仕事はたくさん依頼があるんですよ。面白さがさっぱりわからない状態で3年くらいやっていました。「麻紀ちゃん、ジャズじゃないよね」って言われながら(笑)

 

あるとき、3年前まったく聴けなかったCDをたまたま見つけてなんとなく聴いてみたんです。そしたらすごい鳥肌がたったんですよ、グワーって(笑)

 

なぜかと考えた時に、いつのまにか自分が上達していたことに気付いたんです。当時はジャズに対するフック、引っかかるものがなかったんですね。その出来事がきっかけでジャズが好きになりました(笑)

 

――大阪芸術大学を辞職された理由を教えてください。

 

今の事業がどうしてもやりたかったからです。世の中のスクールや大学は「技術」を教えてくれます。

もちろんとても大事なことなので、しっかりと学ばなければいけません。でも、先程も申し上げた通り音楽、芸術には「その先」が大事なんです。

 

学生には自分とどう向き合っていくか、自分の気持ちをどう取り扱っていくかを全て教えるつもりで接してきました。

 

私は技術だけでなく「人としての在り方」や自分との向き合い方を主に教えていたのですが、それでも歌が上手くなるんです。自分と向き合う中で、涙を流す生徒もいました。

 

みんなすごく慕ってくれて、学生のことも教えることも大好きなのですが、本当に自分のやりたいことをするためには、組織の中ではなく自分で設立するしかないという結論に達しました。

 

――講師をするにあたり、難しいことはどういった部分ですか?

 

相手のポテンシャルをどうやって引き出すかですね。これは難しいけれど、喜びでもあります。もともとそれぞれが持っているものなんですが、自分自身で気づいていなかったり押さえ込んでしまっている。

 

私はそこに光を当て、きっかけを与えるだけなんです。あとは本人が探し出すことですから。

 

――組織から離れることで感じた厳しさなどはありましたか?

 

やっていることは変わりませんし、むしろ本当にやりたいことを自由にできているんです。内容も濃くなっていますし、教えるということに苦労することはないですね。

 

――事業、活動の今後の展開を教えてください。

 

今やっているのは、声をどうやって活かしていくか。

 

話し始めたらすぐ引き込まれたり、信頼できる人だと思われたらいいですよね。声の使い方や、話し方のトレーニングのワークショップをしたり、ポッドキャストで配信しています。

 

シンガーの活動としては、『The DUO!!』というピアノとヴォーカルのユニットの新しいCDを製作しようと思っています。2018年は各地でのツアーも予定しています。

 

 

 

 

――ガンの撲滅に貢献したいともおっしゃっていますが、なぜですか?

 

実は昨年の夏、婚約者をガンで亡くしました。

 

その時に思ったことがあるんです。抗がん剤でガンは治らないと。だんだん弱っていく彼を見ていて、そう感じました。自分で免疫を上げて元気になっていくしかないんです。

 

そして免疫を上げるのに必要なことは、「呼吸・声を出すこと・笑うこと」なんですよ。それって私なら全部出来るんじゃないか、歌の力で苦しんでいる方々の力になれるんじゃないかと思ったんです。

 

できれば病院でゴスペル教室などを開いて、一般の方と入院患者さんが一緒にみんなで歌ったり、みんなで元気になる活動がしたいと思っています。

 

グリーフケア

 

彼が亡くなって、まわりのみんなから凄く気遣ってもらいました。

もちろん悲しくて辛いけれど、みんなの優しさに応えたい、心配をかけたくないという想いから、泣くことができなかったんです。

 

そうすると、ずっと悲しみがくすぶってしまうんですよ。

そうした私自身の体験から、愛する人亡くした人たちの悲しみを癒したくて、グリーフケア(大切な人を亡くした人を癒す活動)をしていきたいなと。

 

その一環として、泣くためのCDを製作したいと思っています。

 

涙には浄化作用があるので、泣くことで少し楽になれたりするんです。

泣いて泣いてちょっと元気になって、次の日また頑張ろうと思ってもらえればいいなと思います。

 

――教育財団の設立も目標に掲げていますね。

 

私は、教育は衣食住よりも大切だと思っているんです。

 

子どもたちに何か教えることは素晴らしいことなんですが、子どもたちが元気に頑張るにはまず大人たちが頑張らないといけない。

カッコイイ大人を増やしたい。みんなを元気づけるような歌が歌える人たちを育てたいんです。

 

給付型奨学金

 

大学で講師をしていて思ったことなんですが、本当に学びたい人は学ばなければいけません。伸ばしてあげなければいけないんです。

 

奨学金という制度もありますけど、学生ローンなので結局返済しなければいけません。特に芸術系の大学に通っている学生は、卒業してもほとんどが就職をしません。アルバイトをしながらプロフェッショナルを目指すんです。

 

ですが、アルバイトで奨学金を返していくのはなかなか難しいんですよ。卒業して2年くらいはお金がない、仕事がない、コネもないという状態ですから。

 

そんな現状をなんとかしたいと思って、給付型の奨学金を与えるための教育財団を設立しようと考えています。

 

 

――財団設立に向けて、どういった動きをしていますか?

 

今は協力者を集めています。

 

10年以内に設立する予定ですが、例えば1000万円の出資をしてくださる方が10人で1億円になるわけです。すでにお約束頂いている方もいらっしゃいます。

 

高額でなくてもいいんです。少額でも大勢の協力があれば大きな金額になります。それで家庭の事情や金銭面で学校に通えない人達を支援していきたいです。

 

――では最後に、夢を持って頑張っている人にアドバイスをお願いします。

 

本当にやりたいことに向かって頑張っていると、時に周りから大きな邪魔をされたりすることがあるんですよね。

 

いわれのない誹謗中傷を受けたり、あるいは何かを失うんじゃないかとか、失敗することへの恐怖が生まれたりする。そうすると、前に進むのが怖くなって踏み出せなくなってしまう。

 

だけど本当にやりたいことをやろうとするとき、そんなことは当たり前に起きるものなんですよ。

私がシンガーになったときも、両親は大反対だったわけで(笑)

 

誰からも何も言われないために、そして失敗しないためには、単に何にもチャレンジしなければいいのかもしれない。でもそんな人生、生きたくないでしょ?

 

だから大丈夫。壁に当たるのは、進んでいるからなんです。

 

そしてそれは誰のものでもなく、自分の人生だから。何があっても、そのコントロールは手放さない。誰のせいにも、何のせいにもしない。自分で選び、自分で責任を取る。

 

そうやって生きていると、いかに自分が愛に恵まれているかがわかるようになってきます。すべてのビジネスは愛なんですよね。

 

まず自分を信じ、愛すること。そして世界に与えること。周りに与えていけば、ちゃんと自分に返って来ます。人生の秘訣は、与えること。

 

大きなことをしようとしなくていい、小さなことを少しずつでいいんです。

 

実は、前しか見ない人は幸せになりにくいんですよ。

たまに後ろを振り返って「頑張ってきたなー」「偉かったなー」って自分に対して思える人の方が幸せになれるんです。

 

そしてまた笑って、前を見て進んで行けばいいと思います。

 

 

 

 

 

 

編集後記

 

彼女から感じた深い慈しみと愛。人はなぜ歌を聴くのでしょうか。なぜ、こんなにも胸が熱くなるのでしょうか。元気を出したいとき、悲しいとき、辛いとき・・・。誰しもが歌に勇気づけられた経験があると思います。

 

「誰かの幸せの背中を押すのがミュージシャン」彼女がサラリと言ってのけたこの言葉は、人間の本質のど真ん中を的確に言い得ています。

 

「自分を愛して他人を愛せる。本当に愛に溢れた状態で、自分を受け入れることが出来るような人。そういう人が歌う歌が、広がっていってほしいと思っています。」

 

そんな人達が歌う歌でいっぱいの世界を見てみたい。藤村さんの歌を聴き、想いを聞き、彼女であればきっとそんな世界を作ってくれるのであろうと確信しています。

 

 

ご自身が歌い続けるだけではなく、次世代の担い手に技術の先にあるものを伝え、これから学ぼうとする若者を全力で支援する。

 

そしてガンで闘病されている方々に元気と未来を与える。藤村麻紀さんの歌に込められた魂が受け継がれ、世界中に幸せが広がっていくことを願っています。

 

取材・文 / 森田 総明

写真 / 細川 俊介


藤村 麻紀

Music Neuro Coaching 代表
公式サイトはこちら
日本ゴスペル音楽協会認定指導員
元大阪芸術大学演奏学科ポピュラー音楽コース准教授
日本メンタルヘルス協会心理カウンセラー
キッズ作文トレーナー

東京都出身。
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、米国スタンフォード大学留学。
1992年 東京都Vocalコンテスト最優秀歌唱賞受賞。
2005年「With Love」でのメジャーデビュー以降、2017年1月発売の「Singing to the sky」まで、5枚のリーダーアルバム含む計9枚のCDをリリース。
また、2015年3月発売の「Yours」は作詞作曲からアレンジまで全編本人によるフルオリジナルCDであり、歌唱だけにとどまらず、その作詞・作曲能力はもちろん、アレンジ能力も高く評価されている。
聴く者の心に深く語りかけるようなその歌は、時に緻密で時に大胆であり、毎回多くの人が心を揺さぶられて涙を流している。

CDはもちろんのこと、その真骨頂が発揮されるのはライブであり、知識に裏付けられた正確なピッチコントロールによりなされる楽器陣とのインタープレイはまさに「声は楽器」であり、「Japan Jazz」、「JazzLife」等の各紙に「ジャズボーカル界を変革する、異次元からのボーカリスト」と言われる所以でもある。
また、その華奢な体からは想像もできないほど豊かな声量を持つ。さらにその確実な英語力、発音は「完璧」と評価され、老若男女、さらに国籍を問わず幅広いファン層に支持されている。

また、「歌は生き様」、「音楽は人格を形成する」という強い信念のもと後進の指導にあたり、人類の進化に貢献することを目指す。
2017年設立のスクール「Music Neuro Coaching for Professional」では、プロのシンガー、及びトレーナーを対象として、脳科学をベースにしたコーチングのスキルを教えている。 また、キッズ作文トレーナーや、末期がん患者とその家族を対象にした病院へのボランティア活動等、社会への貢献活動も広く行っている。

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